背景

  • 津波襲来時は,海岸からなるべく離れた高所に避難するのが基本です.しかし,地震により避難路が被害を受けて避難行動が阻害される場合や,高齢者や地震による重傷者,土地勘の無いレジャー客などは,容易に高所への避難行動がとれないことが想定されます.このような差し迫った状況下に置かれた人々の生命を救う手段を考えることは,極めて重要な課題のひとつです.
  • 本研究は,緊急避難場所として浮体式の津波避難シェルターを提案しようとするものです.
  • 浮体式津波避難シェルターは,上部を避難空間,下部を備蓄機能を備える空間とし,平常時は防災教育の教材等として,津波襲来時には高所への避難が困難な方々に利用していただくことで,津波による人的被害の低減に寄与することを目的としています.

津波防災・救助に関わる課題

  • 地震による重傷者,要救助者の避難
  • 海水浴客などの地元事情に詳しくない外来者の避難誘導
  • 津波防災のために水門閉鎖作業を担う人の安全性の確保

現段階で得られている主要な結論

  • シェルターは汀線より岸側に着底する
  • 斜面上を移動する際,水底から大きく離れることはない.
  • 来襲波高の増加とともにシェルターの着底位置までの距離は線形的に増加する.
  • シェルターの吃水と着定位置とが密接に関係している.
  • シェルターの大凡の着定位置は推定することが可能.
  • 波作用直後には,シェルターは急激に並進速度が上昇し,大きく回転する.初期運動を考慮した設置位置の選定や,構造的に急激な運動を抑制する対策が必要.

これらの結果を受けて,二重式津波避難シェルターの開発を始めました.

研究実績

  1. 重松孝昌(2008):浮体式津波避難シェルターの開発に関する基礎的実験,海洋開発論文集,第24巻,pp.105-110.
  2. 重松孝昌・中東大輔(2011):二重式浮体式津波避難シェルターの運動特性に関する実験的研究,土木学会論文集B2(海岸工学), Vol. 67, No. 2,pp.I_751-I_755.
  3. 重松孝昌・中東大輔(2011):浮体式津波避難シェルターの実用化に向けた取り組み,第48回自然災害科学総合シンポジウム講演論文集,pp.43-48.
  4. 松本弘史・中東大輔・重松孝昌(2012):浮体式津波避難シェルターの運動予測モデル,第31回日本自然災害学会学術講演会講演概要集,pp.81-82.
  5. 松本弘史・重松孝昌(2013):浮体式津波避難シェルターの配置計画の検討に関する研究,平成25年度日本沿岸域学会全国大会,
  6. T. Shigematsu, A. Horii, M. Taguchi, and H. Matsumoto(2014) : Development of float-tpe tsunami evacuation shelter, 34th International Conference on Coastal Engineering.
  7. 松本弘史・重松孝昌(2014):浮体式津波避難施設の運動予測に関する研究,土木学会論文集B3(海洋開発),Vol. 70,No.2,pp.I_319-I_324,2014.
  8. 松本弘史・重松孝昌(2014):偏心構造を有する浮体式津波避難施設の高精度運動予測手法の開発,土木学会論文集B2(海岸工学),Vol. 70,No.2,pp.901-905,2014.
  9. 重松孝昌・堀井 淳・田口政行(2014):自治体防災担当者を対象とした浮体式津波避難シェルターに関するアンケート調査,ODRP都市防災研究論文集,第1巻,pp.99-104,2014.

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