台風21号の被害調査に行ってきました(9/5 調査)

2018年9月4日に台風21号が強い勢力のまま大阪湾西側を通過し,大阪湾沿岸一帯に大きな風水害をもたらしました.

*本記事投稿段階ではまだ経路の最終確定結果は公表されていません.

中條,重松は翌日の5日から主に高潮被害の調査で各地を回りましたので,その一部を報告します.

AM6時 我孫子東2の交差点

台風通過翌日は写真のように信号があらぬ方向を向いてしまっている,あるいは停電で点灯していない所が多く見られました.

AM8時 堺市堺区匠町 南側岸壁

AM8時 堺市堺区匠町 西側沿岸の様子

沿岸のフェンスは多くがなぎ倒され,流木やプラスチックごみなどの漂流物が道路側のフェンスとの間に堆積しています.道路側の漂着物は多くありません.

対象地は南側にも埋立地が広がっていることから高波の影響はそれほど大きくないと考えられます.ここから,高潮は護岸高さを超えたものの浸水は最大でも道路面程度であったと推測できます.

AM8時 堺市堺区匠町 北側

翌日の段階では写真のように横転したトラックの被災も観察されました.

AM9時 堺市堺区匠町 堺浜自然再生ふれあいビーチ

この写真の左側,看板の根本付近に浸水痕跡がきれいに残っています.また,この写真の右手に写っている支柱には,津波と高潮の浸水想定高さが示されています.

驚く人も多いかもしれませんが,大阪湾内の多くでは津波による浸水予測高さよりも高潮による浸水予測高さの方が高いのです.

この場所では津波の浸水予測高さは海抜3.29m,高潮の浸水予測高さは3.90mと0.6mも高潮の方が大きくなっています.

これらと比較すると,今回の台風による堺浜の浸水高さは,概ね津波の浸水予測高さと同程度であったことがわかります.

AM9時 築港新町 堺市西区築港新町3丁 西側護岸

AM9時 築港新町 堺市西区築港新町3丁 分離帯植え込みの洗堀

築港新町は大きく大阪湾側に張り出した埋立地ですが,そのぶん高潮の影響も大きく,護岸パラペットの破損や道路に越流して生じたと考えられる分離帯の洗堀などが確認されました.

AM10時 堺市堺区北波止町 旧堺港

旧堺港にある龍女神像付近では,押し流されて打ち上げられた船舶の被害が多数見られました.

この日は午後から流体力学会に参加するために下調べ程度の調査となりましたが,予想外に被害が大きく感じられました.

大阪湾では大きな高潮被害は第2室戸台風以来となり,それまでの間に沿岸部の土地利用形態が変化し,住民の災害経験度も変化しています.

災害による被害の程度は災害の規模だけでなく社会の脆弱性によっても大きくなります.

改めて私たちは今回の災害から多くを学ぶ必要があると感じました.